【要約】ノーベル経済学賞を図解で分かりやすく解説【髙橋洋一チャンネル#1606】

INDEX(目次)
ノーベル経済学賞
【要約】『高橋洋一チャンネル#1606』
ノーベル経済学賞の研究を二つの図で解説
・番組では、今年のノーベル経済学賞を、コロンビア大学のマイケル・ウッドフォード氏とスタンフォード大学のロバート・ホール氏が受賞したと紹介し、両氏のマクロ経済学への貢献を解説した。
・髙橋氏は、経済理論は本来、数式で記述するものだが、講義では背後にある数式の関係を図に置き換えて説明すると述べた。
・今回も大学の講義資料を使い、金利とGDPの関係を示す図と、GDPとインフレ率の関係を示す図の二つから、経済全体の動きを説明した。
・両氏の貢献について、こうした関係を組み合わせた分析を精緻に行ったことにあると説明し、研究内容はすでに教科書に取り込まれていると述べた。
キーワード:ノーベル経済学賞,マイケル・ウッドフォード,ロバート・ホール,マクロ経済学
IS曲線とMP曲線で見る金融政策と財政政策
・最初の図は、縦軸に金利、横軸にGDPを取り、右下がりのIS曲線と右上がりのMP曲線を描くものだと説明した。
・IS曲線は財・サービス市場の均衡を表し、金利が上がると投資が減ってGDPが下がり、逆に金利が下がると投資などが増えてGDPが上がる関係を示すとした。
・MP曲線は金融政策の運営を表し、GDPが増えて景気が過熱するにつれて、中央銀行が金利を引き上げる関係を示すと説明した。
・モデル上では両曲線の交点で金利とGDPが決まり、利上げでMP曲線が上へ動くとGDPが減り、利下げで下へ動くとGDPが増えると解説した。
・公共投資などの財政政策では、支出自体がGDPに加わるためIS曲線が右へ動き、MP曲線との新しい交点では、GDPと金利がともに上昇すると説明した。
・髙橋氏は、この図だけでも、金融政策と財政政策を実施した際に経済がどちらへ動くかを理解できると述べた。
キーワード:金利,GDP,IS曲線,MP曲線,金融政策,財政政策
フィリップス曲線とGDPギャップによる物価分析
・二つ目の図では、最初の図で決まったGDPを横軸に取り、インフレ率との関係を示す右上がりのフィリップス曲線につなげると説明した。
・ここで重要なのは、実際のGDPと、経済の供給能力を示す潜在GDPとの間に、どの程度の差があるかだと述べた。
・髙橋氏は、需要が供給能力を上回り、その差が大きくなるほど、物価上昇圧力が強まり、インフレ率が高くなるという関係を説明した。
・自身が日頃からGDPギャップの数字を示すのは、この教科書的な関係を具体的に計算し、物価の動きを判断するためだと述べた。
・金融政策や財政政策でGDPがどう動くかを考え、その結果をフィリップス曲線に結び付けることで、経済全体を分析できると解説した。
キーワード:フィリップス曲線,インフレ率,供給能力,潜在GDP,GDPギャップ
平常時と危機時で経済モデルを使い分ける考え方
・髙橋氏は、今回紹介した分析をニューケインジアンの枠組みと位置付け、通常の経済状況では、二つの図によって多くのことを説明できると評価した。
・一方、受賞者らの動学モデルについては、リーマンショックを見落とし、予測も外したとして、危機時の説明力に批判的な見方を示した。
・自身は、大きなショックが起きた場合には、ケインズの当初の考え方に近いオールドケインジアンを用い、その方が経済の動きを説明しやすいと述べた。
・平常時にはニューケインジアン、深刻な危機時にはオールドケインジアンというように、状況に応じて使い分けていると説明した。
・また、危機後にバーナンキ氏が受賞したことに触れ、今回はリーマンショックから時間がたち、通常の経済状況に近づいたため、この研究が評価されたのではないかと推測した。
キーワード:ニューケインジアン,動学モデル,リーマンショック,オールドケインジアン,バーナンキ
数学的な美しさと実際の説明力への評価
・髙橋氏は、プリンストン大学に滞在していた際、ウッドフォード氏と話し、講義も聴いた経験があると述べた。
・ウッドフォード氏について、数学的な美しさや形式の厳密さを強く重視する研究者だと評し、自身はそこまで数式で厳密に組み立てなくてもよいのではないかと感じたと語った。
・数式が多く並ぶ分厚い著書を見せられた経験にも触れ、基本的な内容は二つの図にまとめて理解できるとの見方を示した。
・髙橋氏自身は、講義や議論の説明力ではバーナンキ氏の方を高く評価していたと述べ、数学的な形式と、現実を分かりやすく説明する力を分けて論じた。
・当時のプリンストン大学には、クルーグマン氏、カーネマン氏、シムズ氏、ナッシュ氏らもおり、後に受賞する研究者を含む多くの経済学者と接する機会があったと振り返った。
キーワード:プリンストン大学,ウッドフォード,数学的な美しさ,説明力
コロナ禍の100兆円対策で用いた分析
・追加の解説で髙橋氏は、今回取り上げた動学モデルは、コロナショックの際にも十分役立たなかったとの評価を示した。
・自身が関与したという100兆円対策について、安倍氏から、増税を防ぎながら経済の落ち込みを抑え、同時に過度なインフレも避けるという難しい条件を求められたと説明した。
・当時、財務省はコロナ増税を狙っていたというのが髙橋氏の認識であり、その阻止も対策の目的だったと述べた。
・分析に際しては、動学モデルでも計算したものの、現実をうまく説明できず、予測も信頼しにくかったため、最終的には使わなかったと説明した。
・代わりに、以前から検討していたオールドケインジアンに基づくモデルを用い、危機への対策を考えるうえでは、古いケインズの枠組みの方が使いやすかったと述べた。
・対策の結果については、経済への効果が非常に大きく、その後の財政状況も改善したと、髙橋氏自身の評価を示した。
キーワード:動学モデル,コロナショック,100兆円対策,コロナ増税,オールドケインジアン
期待の変化だけに頼らず財政・金融政策を併用
・髙橋氏は、1995年以降のインターネット上の議論を振り返り、後にリフレ派と呼ばれる人々の間で、金融政策によって人々の期待を変えれば、不況から脱却できるという考え方が出てきたと紹介した。
・自身もインフレ目標には賛成だったが、それによって人々の期待を変えれば、すべてがうまくいくという結論には異論があったと述べた。
・そのため、財政政策と金融政策を十分に併用すれば、期待の変化に依存せず不況を脱却できるという考えを、理論モデルとして検討してきたと説明した。
・このモデルをコロナ禍の対策に用いたとして、自身の立場は、期待への働きかけを重視する一部のリフレ派とも、今回紹介した動学的な分析とも異なると述べた。
・髙橋氏は、経済危機への対応では、人々の期待の変化だけを当てにせず、財政政策と金融政策をともに動かすことを重視する考えを示した。
キーワード:リフレ派,人々の期待,インフレ目標,財政政策,金融政策

