【要約】1月の実質賃金増【予想通り】【髙橋洋一チャンネル#1467】

INDEX(目次)
1月実質賃金1.4%増
『高橋洋一チャンネル#1467』の要約
1月の実質賃金プラス転換とインフレの見方
・1月の実質賃金が前年同月比1.4%増となり、13か月ぶりのプラスに転じたが、これは大きなサプライズではなく、これまでの流れから見ておおむね予想通りの結果といえる
・実質賃金は、名目賃金から物価上昇率(インフレ率)を差し引いたものであり、賃金と物価の動きをセットで見なければ実態はつかめない
・一般に物価は企業が比較的機動的に価格転嫁できるため先に上がりやすい一方、賃金は雇用契約や春闘、定期昇給、賞与などの仕組みがあるため、上昇までに時間差が生じやすい
・そのため景気回復局面では、まず物価が先行して上昇し、その後に賃金が遅れて上がるという流れになりやすく、実質賃金は一時的にマイナスになったりプラスになったりを繰り返す
・ただし長い目で見ると、健全な経済では生産性の上昇分があるため、最終的には賃金上昇率が物価上昇率をやや上回るのが自然であり、日本全体でもその差はおおむね1%前後が目安になる
・つまり、物価と賃金が同じだけしか上がらなければ生活改善につながらず、経済成長の果実として賃金の伸びが物価を上回る状態が望ましいということになる
人手不足が賃上げを促す仕組み
・企業が賃金を引き上げる最大の要因は、結局のところ人手不足である
・企業には、生産性向上で得た利益を内部留保として残すか、賃金として従業員に配分するかという選択肢があるが、人手不足が深刻化すると賃上げをしなければ人材を確保できなくなる
・そのため、景気回復や経済活動の活発化によって人手不足が進むと、企業はやむを得ず賃上げに踏み切り、それがさらに消費や価格形成にも影響を与える
・この循環が安定して回れば、毎年物価が2~3%上昇し、賃金が3~5%程度上がるような形が理想的な経済の姿といえる
・今回の実質賃金プラスも、単に物価が下がったからよくなったと短絡的に見るべきではなく、賃金が物価に遅れて追いついてきた過程として理解する必要がある
日経報道の問題点と実質賃金の読み方
・今回の報道では、物価が下がったために実質賃金が増えたかのような書き方が見られるが、これはやや表面的な見方であり、グラフを長期で見れば実質賃金は上下を繰り返している
・これは景気や物価、賃金の動きの中で、賃金が物価より遅れて上がるという構造を反映しているだけで、単月の数字だけで一喜一憂するのは適切ではない
・景気が本格的に改善していけば、遅れていた賃金上昇の勢いが強まり、結果として実質賃金がプラスになる月が増えていくと考えられる
・その意味で、2026年は実質賃金がプラスになる場面が増えるという見通しにも一定の根拠があり、今回の数字はその流れに沿ったものといえる
原油高・供給ショックとインフレのリスク
・今後の不確定要因としては、イラン情勢などを背景にした原油高があり、こうした外部要因によるコストプッシュ・インフレには注意が必要である
・コストプッシュ・インフレとは、需要拡大ではなく、原油や原材料などの輸入価格上昇によってコストが増え、その分が価格に転嫁されることで起きる物価上昇を指す
・この場合、価格上昇による利益は国内ではなく、資源を供給する海外に流れやすく、日本国内にとってはあまり望ましい物価上昇ではない
・これに対して、需要増によって起こるディマンドプル・インフレは、国内企業や労働者に利益が回りやすく、経済全体には比較的前向きな意味を持つ
・日本は過去のオイルショックで大きな打撃を受けた経験があるため、同じ失敗を繰り返さないよう一定の備えは進んでいると考えられるが、それでも原油価格が急騰すれば国内物価への影響は避けられない
・もっとも、現時点ではイラン情勢があっても、猛烈なコストプッシュ型インフレに直結するとは限らず、過度に悲観する段階ではないとの見方もできる
供給ショック時の政策対応は単純ではない
・供給ショックによる原油高が起きた場合、それが持続的な物価上昇につながるのか、それとも景気を冷やして逆に物価を押し下げるのかは、慎重に見極める必要がある
・原油高が続けば物価上昇圧力は強まる一方で、世界経済が失速すれば需要が落ち込み、結果として価格が下がるケースもありうる
・そのため、供給ショックの局面で単純に需要喚起策だけを行うと、需給が逼迫しているところへさらに需要を乗せることになり、かえってインフレを悪化させる危険がある
・こうした場面では、需給ギャップを見ながら、供給能力と需要のどちらがどの程度動いているかを分析しなければ、適切な政策判断はできない
・過去の狂乱物価のように、供給制約が強い中で需要だけを刺激すると急激な物価上昇を招くため、供給ショック時の政策対応は通常時よりもはるかに難しい
・したがって、現在のような局面では「需要を上げればよい」と単純化せず、供給要因と需要要因を分けて判断する冷静さが重要になる
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