【要約】PB複数年で財政が緩んで金利が成長率を上回る?なんにも分かってない日経【髙橋洋一チャンネル#1412】

INDEX(目次)
成長率・金利論争
『高橋洋一チャンネル#1412』の内容を要約
成長率・金利論争の再燃をどう見るか(12/2日経記事への反論)
・12月2日付の日経新聞に「成長率・金利論争再び」「PB(プライマリーバランス)を単年ではなく複数年で見よ」「財政の緩み懸念」といった趣旨の記事が出たとして、髙橋氏は「また日経が“昔の話”を持ち出してきた」と受け止める
・この「成長率(g)と金利(r)の関係で財政を縛る」議論は、小泉政権期(20年以上前)に一度大きくやったテーマで、当時の「再放送」に近いと位置づけ
・しかも髙橋氏自身が、当時経済財政諮問会議の事務局を担っていた時に、議論の構図を意図的に“面白くなるように”提示し、論点を整理した側だったと明言(=「仕掛けたのは自分」)
当時の緊縮ロジック(財務省側が押してきた主張)
・当時、財務省側は委員や関係者に圧力をかける形で、「金利が成長率より高い」という前提を強調し続けたという
・その前提から、「金利>成長率だと債務残高対GDP比は下がりにくい→だから財政健全化にはPB黒字をもっと大きく(厳しく)しなければならない」と結論づける構図を作っていた
・記事に当時のグラフが載っているが、髙橋氏は「それはデフレ期の数字が背景にある。デフレだから金利と成長率の見え方がそうなっているだけで、恒常的な関係のように言うのはミスリード」と説明
髙橋氏が提示した切り返し:国際データで“前提”を崩す
・髙橋氏は「金利と成長率の関係は、ざっくり言えばだいたい同じ」と述べ、財務省側の「金利が常に高い」決めつけをまず否定
・さらに、国際データ(1970〜2020、長期・多数データ)を調べると、成長率−金利(g−r)の分布はゼロ近辺に集まりつつも、頻度としては
・成長率<金利:約44%
・成長率>金利:約55%
という傾向が見える、と紹介
・要するに「成長率が金利を上回るのは“今だけ”」ではなく、長期的にも普通に起きる。これを示すと、当時は相手が“黙った”というエピソードで、緊縮派の根拠が弱いことを強調
日経の式へのツッコミ:本質は「債務残高対GDP比の動学」
・日経記事には「債務残高対GDP比」と「金利・成長率」の関係を示す式が載っているが、髙橋氏は「そんなのは20年前にもっと整理した形で出している」と述べ、日経の式は分かりにくい/本質からズレると批判
・髙橋氏が重視するのは、債務残高対GDP比(ネット債務でも可)が何で決まるかを、ストレートに示す枠組み
・結論としては「債務残高対GDP比の動きは、金利(r)、成長率(g)、PBで規定される」。特に重要なのが r−g で、ここがプラスなら放っておくと比率は上がりやすい
“r>gならPB黒字が必要”は条件付きの話
・髙橋氏は「rがgより大きいなら、理屈としてはPBを黒字にしないと(比率が)収まらない」という条件付き命題自体は整理して示した、と説明
・ただし、ここで言っているのは“機械的な算数”であって、実際には gとrは固定ではない(景気・物価・金融環境で変わる)
・だから「ある局面のグラフを持ってきて“今後もずっと金利>成長率”」と決めつけると、政策判断を誤る、というのが髙橋氏の立場
さらに先の“本当の答え”:政府だけで見るな(統合政府)
・髙橋氏は「本当の答えは20年前にすでに用意してあった」と述べ、ポイントは「政府だけのPBや金利・成長率の関係では、ネット債務の動きは十分に説明できない」という主張
・そこで出てくるのが統合政府(政府だけでなく、より広い範囲=経済全体のバランスを含む見方)
・統合政府の式まで使うと、議論はさらに先まで行けるが、そもそも日経や緊縮派が“前段の式”すら理解していないレベルなので、「最後の答えまで出すのは無理だろう」と語る
“PBを広く取る”と結論が変わる:小さな赤字を騒ぎすぎ
・統合政府、あるいはPBを“広め”に捉えると、政府の狭い定義の赤字は「大した話ではない」と言える局面が多くなる、というのが髙橋氏の主張
・つまり「財政が緩んで危ない」「複数年でPB管理が必要だ」と煽っても、より広い視点(ネット資産・ネット債務、部門間の相殺)で見ると「そもそも問題が出てこない」と整理できてしまう
・髙橋氏は「問題ないところに火をつけようとしても、広い視点で見れば“問題ない”で終わる」と述べ、日経の記事の方向性自体を否定的に評価
立憲民主党への皮肉:日経依存の議論は周回遅れ
・日経の枠組みで「成長率・金利論争」を仕掛けようとしている側として、髙橋氏は立憲民主党にも言及
・「20年前の自分のペーパーを読めば、論点は左手のジャブ(軽い反論)だけで終わる話。こちらは“本答”まで準備していたのに、相手が来なかった」と述べ、議論の水準が上がっていないことを揶揄
・結果として、日経も立憲も「まず勉強した方がいい」という結論で締める
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