【要約】議員定数削減の真実【髙橋洋一チャンネル#1383】

『髙橋洋一チャンネル」は、数量政策学者で嘉悦大学教授の髙橋洋一さんが視聴者の質問に答える形で、政治経済や世界情勢など現在進行中の問題について理路整然と解説してくれるYouTubeチャンネルです。
INDEX(目次)
議員定数削減について
『高橋洋一チャンネル』の内容を要約
定数削減が「議員の生存問題」になる理由
・衆院の定数削減は、議員一人ひとりの「生き残り」に直結するため、落選リスクが高い議員ほど強く反発し、感情的な対立や「発狂組」が大量発生するほどの大問題になる
・当選が固い議員は比較的冷静に構えられるが、ギリギリのラインにいる議員にとっては、次の選挙で職を失うかどうかの死活問題であり、制度論より自己保身が優先されがち
・このため、理念としては「身を切る改革」に賛成していても、いざ自分の選挙区が統合・廃止となれば立場が変わり、与野党問わず話が一気にこじれる構図になりやすい
維新の「身を切る改革」と国政への波及
・定数削減論議の源流には、日本維新の会が大阪で進めてきた「身を切る改革」があり、自らの議員定数も削減することで、政治改革への本気度を示してきた経緯がある
・維新は国政レベルでも、国会議員の「ぬくぬくとした身分保全」体質を批判し、「自分たちも痛みを負うからこそ、国民にも負担をお願いできる」として定数削減を繰り返し要求
・一方で、反対派は「大阪と国政は条件が違う」「国レベルでは多様な意見の確保がより重要」として、地方の成功例をそのまま国政に当てはめることに慎重姿勢を崩さない
・こうした維新vs既存政党という構図に、各党内の事情や議員の自己保身が絡むことで、議論は政策論というより「誰がどれだけ損をするか」の綱引きになりやすい
比例定数削減がもたらす「大政党有利・少数政党不利」
・定数削減の中でも特に「比例代表枠の削減」は、小選挙区制の比重を高めるため、大政党に相対的な追い風となり、小政党には極めて厳しい制度変更になる
・大政党は小選挙区で当選者を出せる一方、小政党は多くが比例枠頼みであり、比例定数が削られると「党としての生存スペース」が物理的に縮小してしまう
・もちろん、自民党や維新といった大政党の議席も数としては減るが、小政党は丸ごと議席を失う選挙区が増え、党そのものが国会からほぼ姿を消す可能性も出てくる
・深夜帯にギリギリ比例復活で当選が決まるような候補ほど真っ先に削られるため、「選挙特番で12時以降に当確が出るような人は、みんな落ちる制度だ」と揶揄されるほど
試算例:比例50削減時の議席構成と影響
・仮に現行の衆院435議席から比例代表を50減らして385議席にすると、過半数ラインは193議席となり、前回選挙の結果を機械的に当てはめれば、自民党が単独過半数を超える形になるとの試算がある
・このシミュレーションでは、自民も維新も一定数議席を減らすが、少数野党が一斉に「国会からはじき出される」ような格好になり、事実上の二大政党化が進む方向に働く
・結果として「政党乱立」が難しくなり、新党や小規模政党が生き残るハードルが上がるため、現行制度が辛うじて維持している多様な勢力構成が大きく変質する可能性が高い
小選挙区制と比例代表制の長所・短所、国際比較
・小選挙区制を強めれば、アメリカやイギリスのように、二大政党を軸とした政権交代が起こりやすくなり、「選挙で勝てば政権が変わる」というわかりやすさが長所となる
・一方で、比例代表制を中心にすると、EU諸国に多く見られるように、多数の政党が国会に進出し、選挙後の連立交渉が複雑化するものの、多様な意見や少数派の声を議席に反映しやすいというメリットがある
・日本の現行制度(小選挙区+比例代表並立制)は、その中間をねらった折衷案であり、「どっちつかず」とも言えるため、これを今後どちら側に傾けるかで政治の姿が大きく変わる
・理論的にどちらか一方が絶対に優れているなら世界中がそれを採用しているはずだが、現実には両タイプが並存しているため、最終的には「どの政治文化・価値観を重視するか」という国民の好みの問題になる
デュヴェルジェの法則と政党数の収れん
・小選挙区制を強めると「デュヴェルジェの法則」と呼ばれる現象が働き、1人区では事実上2政党程度しか生き残れない、2人区なら3政党、3人区なら4政党程度に収れんする傾向がある
・1人区では、1位と2位の争いに票が集中し、3位以下にはほぼ勝ち目がなくなるため、有権者も「死に票」を避けて上位2候補に投票し、さらに二大政党化が進む
・こうしたメカニズムのため、共産党のように1位・2位に入りづらい政党は、小選挙区寄りの制度改革に強く反対し、逆に比例中心の制度を志向する
・比例代表中心の制度に振れば、小政党が乱立し、連立交渉が常態化する一方で、少数意見の議席化という意味では望ましい面もあり、ここでも「安定と多様性」のどちらを重視するかの選択が問われる
今後の選挙制度改革の見通し
・選挙制度改革は、どちらの制度を選んでも「誰かが大きく損をする」ゼロサムの世界であり、少数野党は比例維持・拡充を、大政党は小選挙区強化を本能的に求める構図になりがち
・多数決で決めれば大政党側に有利な結論になりやすい一方、それを進めるとマスコミなどから「数の横暴だ」と強い批判を浴びやすく、選挙制度そのものの正当性を巡る政治論争が激化する
・結果として、国会で本格的に議論すればするほど利害対立が先鋭化し、理路整然とした制度設計論よりも、「自党と自分の議席をどう守るか」という生々しい駆け引きが前面に出る
・こうした事情を踏まえ、高橋氏は、定数削減や選挙制度の抜本改革が短期間で決着する可能性は低く、「かなり先の話になるだろう」と冷静に見ている
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